11/15/2009
11/09/2009
ドイツから来た「N」女史の思い出
ベルリンの壁崩壊から20年。ドイツ人に対するロシア人の感情はさまざまだが、どう見ても独ソ戦を行ったと思えないほど、どちらかというと親近感がある。
ところで、インターナショナル・ウーマンズ・クラブでロシア語サークルにも入っていた私は、そこでNさんというドイツ人と知り合った。何度か彼女の自宅がサークル会場になったが、夫がドイツ大使館勤務だったため、モスフィルム通りに面した職員アパートの(日本風でいえばマンションか)、広く落ち着いた部屋に住んでいた。
彼女はロシア語もかなりうまく、サークルの中では上級レベルだった。
ある冬の日、私はサークルの開催日を間違えて彼女の家に行ってしまった。突然来訪した私にびっくりしながらも、「お茶でも飲んでいきなさい」と言って部屋に入れてくれた。そこでNさんと普段はできない話をいくつかしたのだが、彼女は実はチェコ人だった。
ティーンエイジャーの頃、プラハの春が起こり、そのときソ連軍が介入してきた。ロシア語が強要され、ソ連は大嫌いだと思いながら暮らしてきたという。結婚した相手はドイツ人だったので、ヨーロッパを何カ国か回ったが、まさかロシアに配属されるとは思わなかったそうだ。ベルリンの壁もかつてのソ連もなくなったが、わだかまりがなくなったわけではない。Nさんは複雑な思いでモスクワに来たそうだが、子どものころ習わされたロシア語が甦るにつれ、ロシアに対する興味が出てきたのだと語っていた。
サークルのとき、私はNさんによい感情を持っていなかった。というのは、どうもアジア人に対する蔑視みたいなものを感じていたからだ。しかしこのとき以来、彼女に対する見方を変えた。ドイツにもソ連にも翻弄されてきたチェコスロヴァキア。そこに生まれたNさんが、ドイツ人と結婚してロシアに住んでいるということに、不屈の精神を感じたからだ。
残念なことに、そのサークルは帰国者が増えて空中分解してしまった。
11/07/2009
モスクワの家具屋
モスクワでの住まいは、前任者のお譲り家具があったため、新しく家具を購入することはほとんどなかった。ソ連時代のアパートは、同じような家具が作り付けられていたし、たとえ家具や気の利いたインテリア雑貨を買おうと思っても、商品が極端に少なく、高かった。フリーペーパーには家具屋の広告が出ていたが(単に”Мебель”とだけあって、店名は不明)、家具広告より幅を利かせていたのが「窓」や「台所」の広告。つまり、古い窓をサッシにしたり(ソ連時代の窓は木枠で隙間がある)、台所をヨーロピアンスタイルに変える需要の方が多かったのだ。
ほどなくレニングラーツキー・プロスペクトに「グラント(だったか)」という総合家具屋がオープン。また、モジャイスコエ・ショッセに「トゥリ・キタ(3頭の鯨の意)」という店ができ、高いながらもインテリア家具を買うことができるようになった。ただし、これらの家具が扱うデザインは、どことなく野暮ったくゴテゴテとしている。
これに価格破壊とデザインのよさで衝撃を与えたのが、スゥエーデンの「イケア」。2000年にモスクワ郊外のヒムキにオープン。無料送迎バスも新鮮だった。その後イケアは2店舗新たにでき、そのうちギガマーケット「アシャン」と同じ敷地にできたイケアは、週末になると家族連れが大挙して来て大渋滞が引き起こされるようになった。
ポップで楽しい色調とシンプルな材質。なにより安く買いやすい。もともとロシア人は、「都市部の自宅」と「ダーチャ用」の2世帯分家具が必要だから、イケア家具の値ごろ感はたちまち大人気となった。ちなみにモスクワのイケア店内でもらえる鉛筆と紙製巻尺は世界共通仕様。前述の「トゥリ・キタ」は中国からのグレー輸入で問題となった。
http://www.3kita.ru/
http://www.ikea.com/ru/
11/03/2009
民族統一の日
11月4日は「民族統一の日(День Народного единства)」である。私がモスクワにいる間、この祝日はまだ始まっていなかった。2004年に採択されて以来、これまで祝日とされていたロシア革命記念日(11月7日)は平日となってしまった。
それにしても、どういう由来で決められたのかはっきりしない。ロシアの祝日解説によれば、「1612年にモスクワがポーランドの支配から自由になった日」とのことだが、それが革命が起こった日より重要なのか、外国人の私としてはよく理解できない。
いずれにしても、在外公館が警告メールを発してくるように、この日は極右をはじめ熱烈愛国主義者があちこちでデモや集会を行う要注意の日となったようだ。
ロシア、とくにモスクワなど大都市での外国人排斥運動はかなり深刻な問題。当局がそれを公認してしまっている以上、自衛でやりすごすしかない。
11/01/2009
モスクワのエスカレーター
エスカレーターで、関東は左に立ち右側は追い越し用、関西では右に立ち左側を追い越し用としているようだが、これに基づけばモスクワのエスカレーターは関西方式が採用されている。
地下鉄のエスカレーターは、長くて傾斜があってしかも速度が速い。慣れるまでは、エスカレーターに乗るのもタイミングが合わずに苦労する。ましてや、これを駆け下りたり駆け上ったりするのは安全上勧められない。しかし私も最後は慣れて、よく「駆け下りて」いた部類なのであまりえらそうなことは言えない。
エスカレーターはたまに停止する。上りに乗っているときは影響はそれほど大きくないが、下りに乗っている場合、運が悪ければひっくり返る。エスカレーターの運用は、エスカレーターの始点に座っているおばさんの手中にゆだねられている。おばさん(地下鉄職員)は、常に人々がおとなしくエスカレーターを利用してるか、無法者がいないかどうか監視している。ときどき、コインを手すりに落として遊んだりする若者をヒステリックに注意する。そうかと思うと、まったくよそを向いている怠慢なおばさんもおり、その周りの空気は「ソ連」そのものだ。
地下鉄のエスカレーターは、定期的にオーバーホールされている。これこそ古いものを長く使うロシアの美点であるが、むき出しになった大きな歯車を見ると、その動力機構のアナログさに関心したりびっくりしたりする。
10/27/2009
耳聞きロシア語
USAを意味するСШАは「エス・シャー・アー」ではなく、「セシャー」。BMWは「ビー・エム・ダブリュー」ではなくて、「ベンヴェー」、CD-RWは「シーディー・アールダブリュー」ではなく、「シーディー・エルヴェー」と発音しないと通じない。
つまり、英語のWhat time is it now? が字面どおり発音してはなかなか通じないように、ロシア語にも字面の読みと違うものが存在する。「W」を「ヴェー」と読むところは、ドイツ語の影響かと思えるが実際のところどうなのだろうか。
ロシア語は子音の連続が多いわりには、母音による音節がはっきりしており、慣れればヒアリングは楽かもしれない。私の場合は、耳覚えのロシア語があまりにも多いために、つづりがわからず苦労しているが。
10/24/2009
モスクワの夜空
冬の星空は美しいというが、モスクワでは雪が降り出す前までが星空を楽しむ最後のチャンス。
とはいえ、モスクワ中心部は街灯やビルの屋上に輝く電光看板がまぶしすぎて、星など見ることはできない。月を除けば金星がせいぜいだ。モスクワに住むロシア人も、天体マニア以外星空を眺めるなどということはあまりない。たとえ星空を見上げるとしても、星座や流星など関心なし。
ところが、星空に関心は薄くても、惑星探査衛星や宇宙飛行士などには興味を持つ。特に「火星」は宇宙フロンティアのロマンを掻き立てるものがあるようだ。
私がモスクワにいた頃モスクワ大学の近くにプラネタリウムがあったが、ある日突然閉鎖となった。身近な宇宙より壮大な宇宙が好きなロシア人。このあたりの距離感が、宇宙科学発展の基礎となったかもしれない。
10/23/2009
劇場占拠事件発生から7年
ドゥブロフカの劇場占拠事件が起きて、ちょうど7年となった。
今なお使用されたガスの成分について、政府から公式発表はなされていない。とりあえず被害者にはいくばくかの見舞金が出たことで、一件落着とされているが、今年3月、死傷した人質たちの所持金が捜査当局によって盗まれていた訴える裁判が行われた。
いくらなんでも被害者から金を当局が盗むとは言語道断。しかし、ロシアでは交通事故に遭った人から臓器が盗まれることもよくある話と聞かされていたので、よくよく考えるとあってもおかしくないのであった。
恐るべきは、シャヒドベルトをしたテロリストより警察、特殊部隊。彼らが公権力を行使して行ったことは何一つとがめられない。7年前からそう思うようになっている。
10/17/2009
ダストシュート
モスクワのアパートには、階段の踊り場やエレベータ付近にダストシュートが備え付けられている。形・色・フタの開け方などさまざまだが、上の階から落とされたゴミは下のゴミ収集口まで一直線に落下する。基本的に瓶など割れると危ない物以外、何でもダストシュートに放り込む。ゴミを袋に入れようがゴミ箱から中身だけ捨てようがかまわないし、分別もなし、ゴミ収集の時間も関係なし。日本から来た者にとって、これは便利すぎる。
だが便利な反面、問題も多い。
監視がないので、タバコの吸殻を投げ捨てボヤが出たこともある。ダンボールなど大きいゴミを無理に押し込み、ゴミが下まで行かずに貯まってしまったり、夜中にゴミを捨てる音が配管を伝って響くことも。寒いロシアでゴキブリが元気なのもこのダストシュートのおかげ。
しかし、もっと驚くべきゴミ捨ての習慣がロシア人にはあった。
フラットを出るともうダストシュートなのに、残飯などちょっとしたゴミを便器に捨てる人が多い。さすがに紙ごみは流さないが、油ものなど平気で流してしまうのだ。だから、トイレの排水が壊れることもあるようだが、意に介する人が少ないというのもロシア人のおおらかさだろうか。



















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