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01.09.05

ベスラン1周年

ベスランでの学校占拠事件が発生してからちょうど1年がたった。思えば去年は2月の地下鉄爆破に始まり、テロの連続。そのなかでも学校占拠事件は多くの子供が犠牲になった最悪のテロだった。

当局側が学校に突入し、事実上事件が「解決」した日、私はロシア人の知人宅にいた。久しぶりに彼らと会い、楽しいはずの食事会だったが、事件を「中継」するテレビの映像を前に私たちは凍りついた。裸のまま逃げているたくさんの子供たち。いっこうに把握されない死傷者数。私たちはその一昨年に起きた、劇場占拠事件を思い出しながら戦慄した。

先日、外国のテレビ局が学校占拠事件の全容解明を試みた番組を見た。決してロシア国内では報道されることがないであろう事実がたくさんあった。たとえば生き残った人たちの生の証言。事件を見守り続けた家族たちの証言。そして事件の一部始終を取材した外国人記者の証言。もしこれらの証言がそのままロシア国内で報道されれば、当然政府批判が起こるだろう。したがって、一般市民は政府に選ばれた人だけの「証言」しか知らない。

ロシア人の知り合いたちとベスランや一連のテロのことを話題にしようと思っても、たいてい彼らは乗ってこない。地下鉄も学校も病院もいつテロが起こるかわからない。でも地下鉄に乗って仕事に行かねばならないし、いつ起こるかわからないテロを恐れてモスクワを逃げ出すわけにはいかない。家の中にいたって、アパートまるごと爆破されることだってある。生きている以上、テロに遭うリスクは避けられない。だから、テロが起こる土壌の上に暮らしていることをあえて無視したい、といった感じだ。

ベスランの学校占拠事件から1周年を迎えても、テロ発生の原因がなくなったわけではない。彼らは子供たちの入学式というハレの日を、これから先も厳戒態勢の中で迎えなければならない。こうした不幸な状況を彼らはどう思っているのだろうか。

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