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16.11.05

モスクワでパスポートとビザを摺られた話

ちょうど一年前の11月12日のこと。買い物を頼まれて、お土産市場へ買出しへ行った帰りの地下鉄で、私は命の次に大事といわれるパスポートとビザを摺られてしまった。超満員の地下鉄に乗っていたにもかかわらず、両手いっぱい荷物を持ち、リュックの方に気を回していなかった。パスポートは巾着袋にいれて、リュックの底に入れていたから油断していたのだ。まさか巾着ごと盗られるとは思ってもみず、しかも気づいたのは、家に帰ってから3時間以上もたってからのことだった。

次の日、地元の地区警察署に行った。一人で行ってはいけないといわれたので、日本企業で働く、ロシア人職員に同行してもらった。うちの管轄ではないと言いたくてたまらなそうな門番を説得するのに小一時間。パスポートを盗られたのに気づいたのは自宅だと言い張って、その関門を突破。運が悪ければ、乗っていた地下鉄路線沿いの警察をたらい回されるらしい。

ようやく最初に通されたところは、がらーんとした暗い部屋に古いデスクトップパソコンと、私服の若い男性警官がひとり。彼が私から摺られたときの状況や盗られた物、値段、出生地、モスクワでの住所などを事情聴取していく。そして、「今日は盗難証明を書く係官が帰宅したので、また来週来い」と言って、次に行く部屋を指示した。

次に行った部屋は、これまた大学生と見まごう私服の女の子が3人。暖房が入っていなくて、マフラーを首にぐるぐるまきにしている。私たちが入っていっても、携帯メールを打つのをやめない。数分が過ぎてようやく3人のうちのひとりが面倒くさそうに同じ事情聴取をした。残り二人は携帯で電話したり菓子食べたり、へたな歌を歌ったり、まったく警官らしくない。それでもこちらは盗難証明書を出してもらいたい一心なので神妙にしていた。

その日やれることはそれだけだった。週明け、再びその警察署へ盗難証明書をもらいに出直した。しかし、女の子警官が打った書類にはタイプミスがあったので指摘したら、例の女子警官が面倒くさそうに修正した。出来上がった書類はсправка(盗難証明)とпостановление(立件書)だ。新しいパスポートとビザができる間は(パスポートは1週間かからなかったが、ビザは2週間かかった)、この紙切れが私の唯一の身分証明となる。かりに街中で警察から職務質問を受けたとしても、ビザとともになくなった出入国カードの代わりとしても、この書類は水戸黄門の印籠よろしく、私の身分を証明してくれるというのだ。しかもご丁寧にモスクワ警察はこの盗難事件について、犯人を追及してくれるというのだから、私はこの紙切れの威力に心底おそれいった。

ところで、私のパスポートはどこへいったのだろう。誰か違う写真を貼られて、偽造旅券として出回っているのかもしれない。

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