ロシアにおける中国学
モスクワにいる間、研究室を訪ねてみたいと思った学者がいる。歴史学者ヴィーリャ・ゲリブラス博士だ。中国とロシアの経済・社会・政治問題を中心に
研究している。中国では北京大学や人民大学で教え、1992年からアジア・アフリカ研究所で、2000年より国際関係研究所で教鞭をとる。また、欧州中国
学協会の会員でもある。
氏の本はこれまで二冊入手しているが(『ロシアにおける中国の現実』『グローバル化のロシアと中国人移民』 いずれもМуравей刊)、丹念なデータの読み込みと中国人コミュニティで発行される中国語メディアの数々を詳細に分析している点が秀逸。従来の紋切り型チャイナ・スタディとは一味違うところだ。
モスクワだけでなく、全ロシアにいる中国人の分布や国境を越えてくるルート、動機、そしてそこで形成されるコミュニティについて、中国当局でさえも客観的に把握していないような情勢が報告されている。
ロシアにおける中国人とは、溶け合わない異物のようなものであると同時に、必要不可欠な3K労働力であり、なにより国家が戦略的パートナーシップを 結ぶ国の民である。中国人の方から見れば、ロシアもビジネス相手国のひとつとしか見ていないようだが、ロシアの立場からすれば、中国人のたくましさは脅威 に映るに違いない。
いずれにせよ、外国人排斥に動くロシアによる在ロシア中国人への対応は、こうした民族社会学を利用していくことになるだろう。
ゲリブラス博士のほかに、ラーリン博士、ヴァスクレセンスキー博士といった研究者が、歴史学という立場からそれぞれ現代中国情勢を論じている。
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