そばがら枕
「モスクワの人々」カテゴリの記事
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福田 ますみ: 暗殺国家ロシア―消されたジャーナリストを追う
昨今のロシアものフィクションは、経済関係を除いておおむね「戦慄の~」という枕詞がついている。この本も例外ではない。当局への批判、根深い社会問題、そしてチェチェン問題の真相を報道しようとしたロシアのジャーナリストたちは、ことごとく権力者に睨まれている。特に感銘を受けたのは、アンナ・ポリトコフスカヤの意志を継ぐエレーナ・ミラシナのジャーナリストとしての成長、DJやTVの事件キャスターを経た紆余曲折のジャーナリスト、セルゲイ・カーネフといった反骨の記者たち。窒息寸前のロシアジャーナリズムにあって、彼らのような報道姿勢は国外にある者がウォッチしサポートしていく必要があると感じる。
ラビア カーディル: ウイグルの母 ラビア・カーディル自伝 中国に一番憎まれている女性
原題は"Die Himmelssturmerin(uは¨つき) Chinas Staatsfeindin Nr.1 erzarhlt(aは¨つき) aus inhrem Leben"。類いまれなる商才を発揮して、一大財産を築いた女性商人、ラビア・カーディル女史が、政界入りと投獄を経て世界ウイグル会議の議長となるまでの激動の半生。単なる「反中国」の本としてではなく、人権問題告発本として読みたい1冊。
米田 綱路: モスクワの孤独―「雪どけ」からプーチン時代のインテリゲンツィア
かなり分厚い本で、通勤時間に少しずつ読み続けても悠に3ヵ月以上かかった。とにかく壮絶な抑圧と反抗の系譜だ。大半に費やされているのは、スターリン政権下からソ連崩壊までだが、チェチェン紛争にからんだ現代の人権弾圧までもインテリゲンツィアの戦いに連なっている。主な人物たちは、イリヤ・エレンブルグ、ナジェージダ・マンデリシュターム、ラリーサ・ボゴラス、セルゲイ・コヴァリョフ、そしてアンナ・ポリトコフスカヤ。幾多の困難を経て人権擁護団体メモリアルが誕生しても、新生ロシアは形を変えて新たな人権弾圧を生んでいる。イデオロギーなき今、ロシア的民主主義と人道的理想の間で、再び苦悩のときを迎えたロシアのインテリゲンツィア。彼らの苦悩は、「○○的民主主義」を唱える国家のすべてにあてまはまる気がする。
オスネ セイエルスタッド: チェチェン 廃墟に生きる戦争孤児たち
本書は第一次チェチェン戦争からつい最近の動向にいたるまで、断続的に現地に滞在して取材したことをレポートしたものである。偶然ながらチェチェンに行くことになった、戦場ルポで名を成そうという野心のない女性ジャーナリストが向かった戦場だからこそ、その内容は深くつきささるものがある。今なお破壊と抑圧が続き、チェチェン戦争の「チェチェン化」という言葉まで編み出されてしまったチェチェン共和国。アンナ・ポリトコフスカヤの著書と併せて読めば、女性ジャーナリストが見た狂気の沙汰が立体的に理解できるだろう。
C.ダグラス・ラミス: ガンジーの危険な平和憲法案 (集英社新書 505A)
日本の平和憲法に関していくつかの著書があるダグラス・ラミス氏の異色作。「ガンジー」「平和」と「危険」という言葉のミスマッチが食指をそそる。ガンジーが生前起案していた憲法が採用されなかった理由、そして為政者にとって一番恐ろしい「民衆の非協力」という方法論がコンパクトな形で紹介されている。ガンジーが残したテキストが、英語で読めるという話も私とっては新鮮な事実だった。
塩川 伸明: 民族とネイション―ナショナリズムという難問 (岩波新書)
民族、ナショナリズム、ネイション、国民国家、エスニシティと、国民と民族を統合または分割する言葉には、実はきちんとした概念がない。昨今は排外主義や民族紛争など、民族と国家をキーとした問題が世界情勢の大きな比重を占める。本書は、こうした問題を言葉の定義解説から説き起こし、ヨーロッパでの国民国家形成時期から冷戦後の世界構図まで、それらの概念がどう変化したかを見ながら、ナショナリズムへの対応を探る。
入門書にして大いなる問題提起を孕む専門書。
グナル ハインゾーン: 自爆する若者たち―人口学が警告する驚愕の未来 (新潮選書)
青年層が増えすぎると、国内で正当な地位を得られず、国外へ移民に出たり侵略戦争を起こす可能性が高まるという。こうした「相続できない息子たち(ユース・バジル)」の増加は、過去ヨーロッパにおいて顕著に見られ、現在アジア、アフリカ諸国をはじめ、紛争地域といわれるところに広がっている。著者は人口学の見地から、ユース・バルジの引き起こす暴力と紛争について、過去から未来までの状況を解明する。途中、魔女狩りなどによる産児調整や日本におけるユース・バルジによる中国侵略などにも触れている。
13.11.10 in モスクワの人々 | Permalink
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